出版社:静岡新聞社
発行日:1989年9月初版
ページ数:179P
著者:小和田哲男
定価:3,010円+税
オススメ度:★★★★☆
書評:
「『静岡県下の古城址を面白く紹介したものはないでしょうか』『魅力的な写真をいっぱい載せた古城の物語のようなものがほしいのですが』-ここ数年来、本社へのこのような問い合わせや要請が目立って増えてきました。”古城址を面白く”というのは、なかなか大変なことでしょうし、何の変哲もないように見える城跡を”魅力的な写真に撮る”というのも、厳しい注文のように思われました。しかし、得難い方々の協力により、三年がかりで『静岡県の城物語』としてまとめあげ、発刊にこぎつけることができました。執筆は中世史の専門家で、古城址研究等の第一人者でもある大和田哲男・静岡大学教授にお願いしました。そして写真は、プロカメラマン(コマーシャル・フォト)であり、自らの趣味として中世城郭を撮り歩いている水野茂氏に依頼しました。この本が古城址の歴史を知り、その魅力に触れる手引書となれば幸いです。また、観光とか開発の名のもとに、これまで多くの古く貴重な歴史的遺産が破壊されてきましたが、この本で出来るだけ多くの方々に古城址の魅力に触れていただき、古城址を大切に守っていこうというムードを少しでも高めることになればと願っています。」
豪華な装丁ときれいな写真を多く載せている。静岡県の代表的な出来事と城を結びつけて解説している。なんといっても水野氏の写真が良い。眺めていると今すぐそこに行きたくなる。そういう意味で写真が映えるように質の良い紙を使用していることは成功していると言えよう。残念ながら発行から20年近く経ち絶版となっている。当初の目的からすれば増版して発行を続けてもらいたいのだが。
[目次]
序 「静岡県の城物語」について
源頼朝の伊豆旗揚げと伊豆・駿河武士団
南北朝時代の東駿北豆
駿河南朝の拠点・安倍城と宗良親王
遠江南朝の拠点・三岳城と宗良親王
応仁の乱の余波、遠江へ
平時の居館と詰の城
掘り出された駿河今川館とその周辺
兄弟相克、花倉の乱
北遠の国人領主、天野氏と奥山氏
北条早雲の堀越御所攻め
伊豆半島を取り巻く後北条水軍の城
武田・後北条争奪の舞台
甲相駿三国同盟の破綻と駿河の城
武田の一族、穴山梅雪の駿河支配
武田式築城法をさぐる
武田・徳川、高天神城の攻防
家康の遠江進出と浜松城
三方ヶ原合戦の前哨戦、二俣城の攻防
天下人秀吉に抗した城
大御所・家康の城
近世駿遠七藩と城