出版社:櫟(いちい)
発行日:1983年8月初版
ページ数:413P+小諸藩図1枚
著者:中村勝実
定価:1,600円+税
オススメ度:★★★☆☆
書評:
「浅間山から雪が消えると、東京からどっと若い人たちが『藤村の小諸』を訪ねてくる。あの『千曲川旅情のうた』に魅せられてのことだろう。シーズンともなると、『破戒』や『千曲川のスケッチ』の文庫本を手にした藤村ファンは、まさに門前市をなす盛況だ。だが、ほとんどの人は、この城に昔天守閣があり、だれが城主であったかは知らない。まさに藤村文学にかき消されたというのが、小諸城の実態だ。小諸城は城としては平山城だが、同時にそれは浅間の斜面を利用して縄張りをした穴城である。小諸の町は、城より高いところにあって、城下町でなく”城上町”。こうした形態の城は、全国でもその例は聞かない非常に珍しいものである。そんな変った城に一つの興味を抱いて、小諸城の歴史を調べている気になった。」
地元の方に向けた小諸城の啓蒙書であろう。文庫とはいえ、大きさも一回り大きく、ページ数も多い。実に読み応えがある。著者は元新聞記者であるので私見はあまり入らず語り口は淡々としている。小諸城の入門編としては十分な内容である。
[目次]
城のすがた
櫓と門
草創期のあゆみ
新田開発
牧野氏の入封
藩のしくみ
中山道の旅人
農村のすがた
噴火・一揆・水害
幕末の名君
維新の曲
信州追分戦争
戊辰戦争と廃藩
藤村と小諸
千曲川旅情のうた
小諸藩主九家総覧
小諸藩年表
小諸藩城主一覧
寛永年間の小諸領石高
廃藩前の小諸城武家敷図