城下町金澤 町割覚書

城下町金澤 町割覚書
発行:古川脩(自費出版、限定200部)
発行日:1999年1月初版
ページ数:342P
著者:古川脩
定価:非売品
オススメ度:★★☆☆☆
書評:
「現在の金沢市内には六枚町・富本町・南町・沼田町などと言うバス停や、馬場小学校・味噌蔵町小学校と言うのがあるが、これらは昭和三十七年五月十日『住所地表示に関する法律公布施工』により凡て消滅してしまった町名で、藩政時代からの町名を辛うじて存続している所でも、その位置や範囲が往時より著しく異なっていて戸惑うことが多い。また藩政中より連綿と伝わっている町名の中には、木ノ新保七番丁・玉井町・島田町・柳町・日吉町・折違町などあるが、これらの町の殆どはJR金沢駅の構内となり駅前広場と冷たい鉄路だけがむなしく横たわっている。それでは第二次大戦以前の旧市内にどんな町があったかと調べてみると三百六十余りの町名があり、更に藩政時代に遡ればこれ以外に二百有余の町名や小路名があったが、現在も町名として残っているのは僅か百箇所にも満たない。これら町名の故事来歴を知るには日置謙編『加賀郷土事彙』が最適であるが、索引が厩仮名使いで五十音順となっているため、関連事項を取っ変え引っ替え探さねばならぬ焦れつたさがあり、単に町名の由来を知ろうとするのに一万五千円もする『加賀郷土事彙』を入手するのは・・・と考える人のため、他に『改作所旧記』『加賀志微』などからも引用しその労を省き『亀尾記』の如く旧七聯区を巡り歩く形式に並べ替えてみた。尚、各聯区毎に藩士の名簿を付けたが、これは明治維新より七年程前の文久初期に作られた『加賀藩組分侍帳』に記載されている直臣約千五百名を居住地別に振分けたもので、他に百五十二の寺院に振分けた『加賀藩士檀家別名簿』百二十四頁を作ったが『町割覚書』とは異質であるため別冊とした。」
自費出版である著者はこの編集に七年もかかり漸く完成させたそうだ。内容を見ると、金沢城下町の現在と当時の比較のみならず、各地区別に居住していた藩士の名簿を付けて、城下町の調査には非常に分りやすい構成で十分な内容と思える苦労の大作であろう。金沢市は旧町名の復活に積極的であり、すでに6つの旧町名が復活している。旧町名の復活をさらに進める上でも、本書を金沢市から正式に復刊してみてはどうかと思う。発行部数が少ないため、入手は非常に難しいかもしれない。


[目次]
城下町金澤 風俗抄
 城下町の行政
 藩政下の刑法
 城下町の構成
 災害と福祉
 城下町歳時記
城下町金澤 町割覚書
 旧一聯区 町名の変遷
 旧一聯区 町名の由来
 旧一聯区 居住の藩士
 旧二聯区 町名の変遷
 旧二聯区 町名の由来
 旧二聯区 居住の藩士
 旧三聯区 町名の変遷
 旧三聯区 町名の由来
 旧三聯区 居住の藩士
 旧四聯区 町名の変遷
 旧四聯区 町名の由来
 旧四聯区 居住の藩士
 旧五聯区 町名の変遷
 旧五聯区 町名の由来
 旧五聯区 居住の藩士
 旧六聯区 町名の変遷
 旧六聯区 町名の由来
 旧六聯区 居住の藩士
 旧七聯区 町名の変遷
 旧七聯区 町名の由来
 旧七聯区 居住の藩士
 昭和十六年当時の新市域
 遠隔地勤番藩士