出版社:北国新聞社
発行日:1988年11月
ページ数:203P
著者:鏑木悠紀夫
定価:1,600円+税
オススメ度:★★★★☆
書評:
「本書を書くに至った動機は、たまたま私の先祖が一向一揆の中にあって中心的役割を演じた松任城主鏑木氏であると伝えられ、先祖の歴史をまとめたいという全く私的理由によるのである。七尾城を手中にし、加賀に進攻してきた上杉謙信の前に一揆勢は殆ど屈したが、その中にあってただ一人最後まで抵抗し、遂に和睦に持ち込んだ松任城主鏑木頼信は一揆側の中心的存在として活躍し、一向一揆の滅亡と運命を共にした人物である。その頼信に代表される松任城主三代にわたる鏑木氏は滅亡後、石動山天平寺の流れをくむ寺の僧になり、神官も兼ねて明治に及んだと云われている。」
とはじめに書いてあるが、松任城と鏑木氏に関して詳細にまとめられている。松任城という歴史上あまり脚光を浴びなかった城と城主に関してまとめたものとしては面白い。これは自分が地元石川県出身ということも大いに関連あるが、松任城は一向一揆の歴史の中でも重要な場所であり、一向一揆を語る上では外せない。
テーマのマイナーさ故か、現在非常に入手が困難な状態であるのが残念である。加賀一向一揆を語る際はぜひ読んでほしい1冊である。
[目次]
第一章 松任と松任城
第一節 松任の概要
第二節 松任城について
第三節 歴代の城主と城の変遷
第四節 松任城の廃城
第二章 松任城主の鏑木氏考察
第一節 鏑木、蕪木の姓について
第二節 松任城主鏑木氏の考察
第三章 加賀の一向一揆の展開
第一節 旧仏教系の衰退と真宗の勃興
第二節 富樫氏の滅亡と「百姓ノ持タル国」の成立
第三節 金沢御坊の創建と組織機構
第四章 松任城主鏑木氏と一向一揆
第一節 鏑木氏の関係した事件と活躍
第二節 鏑木氏の滅亡
第五章 鏑木家の由緒
第一節 滅亡後の鏑木氏と石動山大蔵坊
第二節 石動山天平寺について
第三節 宝光院・延寿寺について
第四節 鏑木家の系譜