編集・発行:石川県埋蔵文化財センター
発行日:1996年3月29日
ページ数:56P+図版18P
定価:非売品
オススメ度:★★★☆☆
書評:
「金沢城の周りには、百間堀・白鳥堀・大手堀・いもり堀などが掘られ、それには主として土橋が架けられ、石川門・尾坂門・西丁口門・甚右衛門坂門・鼠多門・車橋がある。この度発掘調査を行った車橋門跡は、最も広い水面をなした百間堀といもり堀の間に設けられたもので、城域の南端部に位置する。金沢城の南は、小立野台地や笠舞段丘に続き、山沿いから攻めてくる敵勢に対しては、非常に重要な防備地点に当たる。また、車橋は本丸・東の丸の最も近い地点に位置することも、この橋のもつ特徴の一つといえよう。ただ、車橋門を通り抜けても、その前面には高い石垣が立ちはだかっており、直ちに主郭部には通じず、左手の御花畑と長屋群を通り薪の丸に入るか、右手の水之手門に回り鶴の丸に入るのが城内へのコースとなろう。だから金沢城の正門は、あくまでも石川門や尾坂門だったのであり、平時の車橋は通用門としての役割を果たしたものと思う。また、本来的には水位の異なる百間堀といもり堀を水堀として維持するための仕切り土手として必要だったのであり、橋と門は二次的に付加されたものかも知れない。」
調査区は当時テニスコートで現在はいもり堀として復元予定の場所の東端である。車橋はいもり堀と石垣の間にある歩道の入口付近にあった。本発掘調査の南側は後日いもり堀発掘調査のときも再度調査され、現在は鯉喉櫓台跡として復元を待つばかりになっている。車橋は現在百間堀が道路となっている現況からも復元の可能性は極めて低いので、本調査から往時の姿を想像してみるのも悪くない。
本書は残念ながら一般販売はされておらず入手できなかったので、図書館で借りて一部コピーを所持している。
[目次]
第1章 調査に至る経緯と経過
第1節 調査の契機
第2節 調査日誌
第2章 金沢城をめぐる位置
第1節 地形概説
第2節 金沢御坊と金沢城
第3章 遺構と遺物
第1節 基本土層と遺構の概要
第2節 石垣1
第3節 石垣4
第4節 石垣2・3
第5節 沈床園調査区
第4章 まとめ
第1節 石垣2・3間出土陶磁器の年代的位置づけ
第2節 車橋門の建設と変遷
第3節 石垣3と初期の石垣普請
第4節 石垣研究をめぐって
第5節 結語