出版社:郷土出版社
発行日:1995年7月初版
ページ数:255P
監修:水島大二
編集:「定本・和歌山県の城」刊行会
定価:10,680円+税
オススメ度:★★★★☆
書評:
県内のどこに、どれほどの城跡が存在しているのだろうか調べてみたい、そんなとき、まず郷土関係の書を開く。ところが、これらの書には古城跡の記載が意外と少ない。そこで、もっと詳しくふるさとの城を知りたいという多くの声に応えるために企画されたのが本書である。
これまでに発刊されている古城跡について記した本の多くは、城跡を実際に歩いて調べたものではなく、江戸時代の「紀伊続風土記」(1840年成立)に記された古城跡を記載したものが大半であった。「紀伊続風土記」では「古城」の項は145か所で、ほかの項目内に古城館の存在を示したものを含めても約330か所に過ぎない。そして、過去の多くの書籍では、地元に城の遺構が残存していても、伝承があっても、「紀伊続風土記」に記載されていない城跡は取り上げていない傾向がみられたのである。また、「城」が「天守閣」の代名詞となっている今日、山上に築かれることの多かった中世城郭は「トリデ」ではあっても「城」ではない、ましてや平地に築かれた「土居」の類に至っては、単なる「屋敷」で「城」とはほど遠いものとして扱われる傾向もみられた。
こうした過去の記録に固執せず、城と呼ばれていなくても「城郭」に類する役割と構造をもつものを歩き調べていくうちに、和歌山県内でその数は800余城にもなった。その城名を活字にすれば一枚の紙に収まるものだが、この一枚に35年もの歳月を費やしたことになる。
本書は、県内の城郭を網羅した長年の調査結果を世に問う初の試みであった。城郭研究者のみならず広く一般の読者にとっても読みやすく、使いやすい内容と構成を心掛け、今後、「紀伊続風土記」に代わる郷土の基本書となるよう工夫した。
写真・図版を多用し、和歌山県の城郭を幅広く収録した本書は、和歌山県の城郭資料として第一級である。発行部数のためか、現在非常に入手が困難なのが残念。
カテゴリー: 畿内
近江の城 城が語る湖国の戦国史
出版社:サンライズ出版
発行日:1997年10月初版
ページ数:200P
著者:中井均
定価:1,200円+税
オススメ度:★★★☆☆
書評:
「滋賀県教育委員会が10年を費やした分布調査の結果は10冊のの報告書にまとめられた。そこには人知れず、草に埋もれた名もなき城館跡の基礎的なデータが収められている。幸いにもこの調査の末端に参加させて頂いたり、報告書に導かれて城跡を見学するうちに、近江の中世城館跡はまさに日本城郭史の縮図であり、実にバラエティーに富む様々な構造を有する城館跡が多数存在することがわかった。
本書は、こうした多様な近江の中世城館跡の分布や構造そのものから、従来文書で明らかにされることのなかった湖国の戦国史の再検討を試みるものである。」
城の構造、立地から存在意義を検討している著者の意欲作。
京極氏の城・まち・寺 北近江戦国史
出版社:サンライズ出版
発行日:2003年10月初版
ページ数:132P
編者:伊吹町教育委員会
定価:1,300円+税
オススメ度:★★★☆☆
書評:
本書は、平成14年10月20日に伊吹薬草の里文化センターで開催したシンポジウム「京極氏の城・館・庭園-上平寺館・桐ヶ城(上平寺城)・弥高寺-」の記録集です。
1つに城館群に絞ったシンポジウムであるので内容は充実しています。コースの詳細もあり、訪れる際は携帯すると役立つと思われます。本書を出版しているサンライズ出版は地元滋賀県のこうしたシンポジウム記録集をいくつか発行しているので、これからも期待しています。
城と湖と近江
出版社:サンライズ出版
発行日:2002年5月初版
ページ数:301P
著者:「琵琶湖がつくる近江の歴史」研究会
定価:4,500円+税
オススメ度:★★★☆☆
書評:
前半が「琵琶湖がつくる近江の歴史」研究会のメンバーによる論文集、後半が琵琶湖湖畔に位置する15城の資料集となっている。論文はいずれも城郭と琵琶湖の関係を論じており、書籍の表題どおりである。近江諸城の研究をするときは1冊持っていても良い内容である。
戦国の山城・近江鎌刃城
出版社:サンライズ出版
発行日:2006年1月初版
ページ数:116P
編集:米原市教育委員会
定価:1,300円+税
オススメ度:★★★★☆
書評:
本書は平成17年1月23日に開催された、鎌刃城跡国史跡答申記念講演会「鎌刃城が語る戦国の城-今、明らかにされる戦国城郭の実像-」をもとに製作されたものです。近年までまったく注目されず放置されていたために、良好な状態で残されていた鎌刃城跡がどうように国史跡指定に至ったのか、鎌刃城の意義がよく分かる内容です。講演会というと難しい内容だと先入観を持っている人もいるが、城紹介の一般書とは違った多角的な視点の意見を読むことができ、また講演会当日の雰囲気も感じられ、とてもおもしろいと思います。