名古屋城、堀泥さらい種探し

名古屋市は新年度、名古屋城の外堀で、絶滅した水生植物の復活事業を検討している。おそらく1610年の築城以来初となる外堀の底泥調査を行い、種子を探す。2010年の生物多様性条約締約国会議(COP10)の名古屋開催をにらみ、40年前まではふつうにみられた直径2メートルもの葉を広げるオニバスをはじめ、かつての豊かな植物群の復活をめざす。
ため池の自然研究会会長の名古屋市緑区、元高蔵高校校長、浜島繁隆さん(75)によると、広さ8万平方メートルのお堀の水面は60年代まではオニバスはじめ、ヒシ、ガガブタなど多くの浮き葉で覆われていた。地下水が豊かで、濃尾平野の水生植物のほとんどをみることができる場所だった。しかし水質悪化のため、69年に17種類あった水生植物が、82年には13、95年には5と激減、いまではみる影もない。 これに対し、市が99年から工業用水を連日注入するなどしており、汚濁度を示す化学的酸素要求量(COD)は92年の1リットルあたり12ミリグラムから08年夏は7.4ミリグラムまで回復した。これなら水生植物の復活が可能だ。
計画では、お堀の20~40カ所で底の泥を取り、年代も測定しながら種を探す。当面の目標は、水質悪化以前で発芽も十分可能な40~50年前の種の発掘だ。お堀は江戸時代に池の底さらえをした記録がなく、45年空襲で城が焼けた時のすすより下層の泥からは、かなり古い種が採れるかもしれない。 種は発芽させ、水面によみがえらせる。鳥の食害や、堀の白鳥やコイのえさで水質が悪くなるのを防ぐため、ネットを張るなど防御策も検討する。
浜島さんは「同じ種類の植物でもDNAレベルでは異なる。よそから移植するのではなく、もともとここで生きていた植物を種から復活させられれば、意義深い」と語る。 (asahi.com2009年1月2日付記事より)